基礎からのボイトレ -基礎知識:発声の仕組み-

ボイトレ理論
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歌の悩みを解決するためには基礎知識を理解していないと原因や解決方法を見つけ出すことができません。

今回は発声の仕組みやメカニズムを説明します。

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どうやって声を出すのか

肺から送った息が喉を通るときに声帯が振動し、息が口や鼻を通るまでにその振動が喉や周囲の空洞に共鳴して声となります。

口の内部の空洞を口の開け方や舌で変化させることで異なる母音として聞こえます。また、喉や鼻腔や肺などの空洞や体自体に共鳴させることで音質に違いが出ます。

ようは、声帯自体で「あいうえお」を区別して発声しているのではなく、口や喉の空洞の形で作り上げています。声帯は笛のようなものです。

喉の構造

下の図は喉頭と呼ばれる喉の構造図です。


出典:Wikimedia commonsより

代表的なものの名称を挙げておきます。

9:舌骨
3:喉仏
4:甲状軟骨
7:輪状軟骨
8:気管
14:甲状輪状筋(前筋)

声帯は甲状軟骨の内側にあり、甲状軟骨が声帯を保護する役割をしています。

歌うときの声

「あいうえお」などの音質の違いは、口や喉の空洞の形で作り上げますが、歌うときの音程は声帯が担います。

声帯は左右に開く門のような形状で、喉にあるので、息を吸うときに門を開けて、声を出すときだけ門を閉じ、息を利用して振動させます。(この門は声唇とも呼ばれます)

下の画像は声帯が開いている状態です。


出典:Wikimedia commonsより一部抜粋

また、声帯を閉じている状態は下の画像です。


出典:Wikimedia commonsより一部抜粋

いつも門が閉じてると窒息するので、もちろん無意識のとき声帯は開いてます。

声帯を開け閉めする必要があるので、声帯の周囲には筋肉がいくつかあります。代表的なものは以下です。

  • 内側甲状披裂筋、外側輪状披裂筋など:声帯を開閉させます
  • 輪状甲状筋など:声帯を伸縮させます

ここで「声帯を伸縮」って何?と思われたと思いますが、声帯が伸縮することで振動周波数が変化します。

輪状甲状筋が働くと声帯がピーンと引き伸ばされ、音が高くなります。ギターを調律するときに弦を引っ張ると音が高くなりますよね。それと同じです。

下の図は喉頭の状態を表しています。


出典:Intaractive Atras of Larynxより一部抜粋

紫色が軟骨で、上部の甲状軟骨と下部の輪状軟骨で構成されています。右側が前方で甲状軟骨に喉仏が出ていることが分かります。赤色が輪状甲状筋で甲状軟骨と輪状軟骨をつないでいます。

 

下の図は輪状甲状筋が働いている状態を表しています。


出典:Intaractive Atras of Larynxより一部抜粋

輪状甲状筋が働くと下部の輪状軟骨が左(後方)に動きます

内部にある声帯も輪状軟骨と甲状軟骨とつながっているため、声帯が引き伸ばされます。甲状軟骨の内側の緑色の部分が声帯靭帯で、声帯靭帯に声帯の筋肉(内側甲状披裂筋)がくっついています。

下の図は喉頭を上から見た図です。図の上が前方になります。


出典:Intaractive Atras of Larynxより一部抜粋

緑色がさきほどの声帯靭帯で、赤色が声帯筋(内側甲状被列筋)です。声を出しているときに声帯筋が振動しているのですが、輪状甲状筋が働くと声帯筋が引き伸ばされ高い声になります

地声と裏声の発声メカニズム

地声は普段喋っているときの声で、裏声は場が盛り上がったときに発する「ヒュー!」とかいう奴ですね。

歌う場合、通常は地声で歌って、バラードなどの高音部で裏声に切り替えて切なさを表現したりします。

地声は、以下のメカニズムで発声します。

  • 披裂筋類を働かせて、しっかり声帯を閉じる
  • 息が声帯を通ると声帯が振動して声が出る
  • 輪状甲状筋を働かせて、音程を変化させる

裏声は、以下のメカニズムで発声します。

  • 披裂筋類を働かせて、ある程度声帯を閉じる
  • 息が声帯を通ると声帯が振動して声が出る
  • 輪状甲状筋を働かせて、音程を変化させる

あれ?同じじゃないの?と思われるかもしれませんが、少し違います。

披裂筋類によって声帯が「しっかり」閉じているか「ある程度」閉じているかの違いです。

「しっかり」閉じるためには披裂筋類の中でも「内側甲状披裂筋」を働かせる必要があり、さきほど説明した通りこの筋肉は声帯の一部です。自ら震えながら働かせることになります。

形状が変化しつつ振動しながら働かせるためコントロールが難しいのです。

高音になると声がひっくり返ることがありますよね。それは輪状甲状筋で思いっきり引き伸ばされた内側甲状披裂筋がコントロールを失って「しっかり」声帯を閉めることができなくなるからなんです。

つまり、内側甲状披裂筋が十分に働いているとき地声で、働いていないとき裏声です。

地声と裏声の音質

地声は張りのあるしっかりした声ですね。

一方、裏声は気の抜けたような芯のない声で、息が混じってて音量も出ません。

また、地声は人それぞれ異なった個性のある声ですが、裏声はみんな同じ声に聞こえます。この違いは何でしょうか?

これらの違いは、声帯のどの部分が振動しているかによって出てきます。

声帯は主たる筋肉、靭帯、粘膜で構成されています。

  • 地声は、しっかりと声帯が閉じているので、声帯全体(筋肉まで)で振動します。
  • 裏声は、隙間があるので、表面の粘膜だけ振動します。

裏声が、か細い感じで、息も混じっていることも納得できると思います。

どうやって声を出すかの部分で「空洞や体自体に共鳴させることで音質に違いが出ます」とお伝えしましたが、もちろん音源(声帯)が違えば、最終的な音質も異なります。

下の図は声帯が振動している状態を表しています。表面が粘膜で黄色が靭帯、赤い部分が筋肉です。


出典:Wikimedia Commonsより

地声は上の画像のように声帯全体で振動しているため、表面だけ振動しているとき(裏声)よりも豊かな音源となります。より多くの体積が振動しているため、複雑な振動となり倍音が多く含まれます。倍音が多いと耳にはきらびやかで豊かな音に聞こえます。

声帯が違えば個性として感じられます。また、声帯の厚みを変えることで音質を変えることも可能です。

 

下の図は裏声の声帯の振動を表しています。


出典:Wikimedia Commonsより

裏声は上の画像のように表面の粘膜しか振動しません。単純な振動しかしないため、みんな同じ声に聞こえてしまいます。

 

以上、どのように声が出ているのか(発声の仕組み)を説明しました。

また、地声と裏声の違いについても説明しましたが、地声や裏声は「声区」が異なるとも表現します。次回は声区について説明したいと思います。

 

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