基礎からのボイトレ -基礎知識:声区と喚声点-

ボイトレ理論
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前回は発声の仕組み(メカニズム)を説明しました。その中で地声裏声の振動部分が異なり、全く違う声に聞こえることも説明しました。

地声裏声が全く違う声に聞こえることから、「声区」という概念があります。今回は「声区」と「喚声点」について説明したいと思います。

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声区とは

地声と裏声は同じ人が歌っても全く違う声に聞こえます。これは地声は声帯の筋肉全体が振動することで多くの倍音を含む豊かな声になるのに対し、裏声は声帯の粘膜しか振動しないため倍音があまりない声になるからです。裏声は基本振動周波数の成分だけが聞こえるため、どの人が裏声を出しても同じような声に聞こえます。

→「地声と裏声の発声メカニズム」はこちら

この地声と裏声の違い「声区」が異なると言います。

クラシックが最新音楽だった古い時代から当然声区の概念がありますが、実は非常に曖昧です。地声裏声は多くの人が出すことができ、明らかに声質が異なるため、地声裏声は異なる声区であるのは確かです。

ただし、はっきりと地声であるとも裏声であるとも言えない声が存在し、その声をどの声区に分けるのかが曖昧で明確になっていません。声の種類は次回に説明します。

喚声点

地声裏声以外にも声の種類があるので声区の定義は曖昧なのですが、明確に分離している2つの声区は以下の通りとなります。

これは声帯の振動状態が全く異なるので、異なる声区として明確に定義できます。

地声で歌っているときに高音になると声がひっくり返りますよね。「キャイ~ンッ」って感じで。ある音程を超えるときは裏声で歌うことになります。

地声裏声の切り替わる音程を「喚声点」と呼びます。英語ではbridgeやbreakと呼びます。オペラ用語ではパッサージョ(Passagio)と呼びます。

喚声点より低い音程は地声で、喚声点より高い音程は裏声で歌います。

喚声点の音程は一般的に以下と言われています。

  • 男性:E4,F4前後
  • 女性:B4,C5前後

喚声点の例 男性:E4,F4前後 女性:B4,C5前後

音程の表記については、以下の記事を参考にしてください。

人によって違いますが、男性だとG4が楽に出る人は少なく、出ても無理して出していると思います。

基礎知識を説明しているので関係ないのですが、無理して出すことがボイトレで最もやってはいけないことなので、無理に出そうとせずに素直に裏声を使いましょう。地声で高音を出す方法は別の機会に説明するので、今は無理をしないでください。

高音を地声で出す方法を説明するときに「喚声点」を理解していることが必要になるので覚えておいてください。

声区融合

地声と裏声は声区が異なり、その境界を喚声点と呼びます。

皆さんの中には「高音が出ない」と悩んでいる方も多いと思います。僕もかつてはそうでした(まだ改善中ですが)。

喚声点がなければいいのにと思いますよね。喚声点をなくすことを目指すのが「声区融合」です

声区融合もいろいろな解釈があるのですが、一般的には以下のことが言われています。

  • 地声から裏声まで境界を感じずにスムーズに移動できること
  • スムーズに移動するためには声帯周辺の筋肉の完璧な制御が必要
  • 喚声点付近は地声のような声質になる(喚声点を越えても地声に聞こえる)
  • 声区融合のことをミックスボイスと呼ぶこともある

→「高音ボイトレ ミックスボイスで高音を目指せ!-出し方と練習ー」

声区が分かれているのは地声裏声の発声方法が大きく異なるためです。地声裏声では使う筋肉が違うのですが、それらの筋肉を同時に完璧に制御することで地声裏声の境界を意識することなく歌うことができます。

ボイトレの最終目標は歌の悩みが解消されることなので、声帯周辺の筋肉の完璧な制御が必要な声区融合は最終ゴールだと思います。すぐにでもトライしたいと思いますが、まずは基礎知識と基礎練習が必要なので、焦らずに学んでいきましょう。

 

今回は「声区」と声区の境界の「喚声点」、「声区融合」を説明しました。声区の説明の中で地声でも裏声でもない声があると説明しました。次回はそれらのいろいろな声について説明したいと思います。

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