前回の「高音ボイトレ 練習編(ミックスボイスの出し方)」では、ファルセットからヘッドボイスを経てミックスボイスを発声する方法を説明しました。とりあえずこれで喚声点を越えた高音の発声ができるようになったのではないでしょうか。
また、以前の「高音ボイトレ 導入編」の記事で以下の練習方法を紹介しました。
- 裏声の強化
- ヘッドボイスの発声
- ヘッドボイスと地声をつなぐ(ここでミックスボイスが発現)
- ミックスボイスを響かせる場所を探る
- 地声とミックスボイスの音程移動練習
今回は、実際に歌に使うための練習方法「4.ミックスボイスを響かせる場所を探る」について説明します。
ミックスボイスの出し方
以下のようにミックスボイスの出し方を前回の記事で説明しました。
- ファルセットから発声を始める
- 地声に向かって徐々に破裂筋類に力を入れる
- ヘッドボイスを経てミックスボイスの発声になる
- 音程を上げていき、ミックスボイスの感覚がつかめたら、ミックスボイスから発声できるようにする
これで、ミックスボイスが発声できるようになったと思います。
ただし、そのまま歌に使えればいいんですが、実際にカラオケなどで歌ってみると「ロングトーンは出せるけど歌にならないんだよね。。」となりませんか?僕はこの状態に陥りました。
歌に使えない主な原因は以下だと思います。
- 喚声点の前後(上下)で声質が変わってしまう
- メロディーが喚声点付近を通過するときに発声がおかしくなる
今回は、喚声点前後の声質の改善について説明したいと思います。
喚声点前後の声質
喚声点より前(下)は、もともと地声で歌っていたので声質はほぼ地声です。(喚声点の少し下はミックスボイスで発声するので、ほぼ地声と表現しています)
喚声点を越えた音程では、ミックスボイスになっているので地声よりは軽くて細い声質になります。
そもそも地声で出せないので、この音域の地声を確認したことがないと思いますが、もし地声で出したとしても音程が高くなるため軽くて細い声質が正解です。(ミックスボイスはもう少し軽くなります)
無理に張り上げた場合、声質は低い音域の地声に近くなりますが、これはそもそも発声が間違っているので参考にしてはいけません。無理に太く作っているだけです。
理想の声質は、地声の低い音域から徐々に高い音域に向けて軽い声質になり、喚声点を越えている最中もスムーズに声質が変化していく状態です。
ミックスボイスを始めて間もない場合、喚声点の前後で声質が大きく変わってしまうと思います。これは大きく2つの原因に分かれると思います。
- そもそもミックスボイスができていない
- ミックスボイスはできているが、地声とうまくつなげることができていない
ミックスボイスができていない
そもそもミックスボイスができていないとは、ミックスボイスと思っている声が実はヘッドボイスである場合のことです。
以下の状態を感じている場合は、ヘッドボイスで発声している可能性があります。
- 喚声点前後で喉の形状が大きく変化している。ミックスボイスのときに裏声と同じ喉の形状になっている。
- 喉と鎖骨の間に手をあてても地声のような振動を全く感じない。(音程が高くなると振動自体は小さくなるので、全く感じない場合です)
- 喉の下部で振動せず、口蓋(口の奥の上部)だけに振動を感じる。
上記の状態を感じられる場合は、前回の記事のミックスボイスの出し方を復習しましょう。
何度練習してもロングトーンではうまくいっているのに歌ではうまくいかない場合は、地声とうまくつなげることができていないだけかもしれないので、次に進んでも良いかも知れません。
地声とのつなげ方
次回の音程移動練習にも関わってきますが、最初のうちにやっておいたほうが良い練習方法を紹介します。
地声からミックスボイス、ヘッドボイスをつないでいく練習です。前回のミックスボイスの出し方とは違い、実際に歌うときの声(響き)のみで行います。
- 楽に出せる音程の地声を発声します
- 発声したまま音程を上げていきます(音階はつけず一気に上げる)
- 喚声点付近でミックスボイスになり、そのまま自分の最高音まで上がっていきます
- 最終的にヘッドボイスになります
実際に歌いたい音域が地声と同じ声質に聞こえているかどうかに気をつけてください。例えば、上げている途中に喚声点より2度高い音程でいったん音程を保持して(伸ばして)、その声質を確認するなども有効です。
地声に聞こえない場合は、その音程で少し力みを入れてみるなども有効です。首には力を入れず、喉の中だけを意識して力みます。
ミックスボイスの共鳴(響き)
僕がミックスボイスをいろいろ調べているときに以下のような内容を目にしました。
- 地声はチェストボイスと呼ばれ、胸に共鳴する。
- ミックスボイスは鼻腔や頭部に共鳴する。
- ヘッドボイスは頭部に共鳴する。
ほとんどのサイトがこういう認識だと思います。
僕の意見はちょっと違うんですよね。
ミックスボイスも胸に共鳴しています。
てか、地声と同じ声質を目指しているのに共鳴する場所が違うっておかしくないですか?それって全く違う種類の声ですよね。
ヘッドボイスはほぼ頭部は同じ意見なんですが、地声もミックスボイスも胸と頭部(鼻腔も)の両方に共鳴しています。同じ場所だから同じ声質なんだと思います。ただ、高音になると比重が頭部よりになるだけです。
「ミックスボイスは出せてそうだけど、裏声感が抜けないからやっぱり地声とは響く場所が違うんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、ミックスボイスだから裏声感が抜けない訳ではないと思います。
裏声感が抜けない
ミックスボイスを習得した当初はどうしても裏声感が抜けない人が多いと思います。僕も今でも不満があり、徐々に改善してきている状態です。
裏声を使わずに地声から発展させてミックスボイスにできればいいのですが、そもそも地声で高音が出ないから裏声を手がかりにミックスボイスを出そうとしているため、どうしても裏声感が抜けないんだと思います。
これは、長時間のトレーニングしかありません。僕のどれかの過去記事で「ボイトレは喉の筋トレ」と書きましたが、「ミックスボイスは未使用だった神経の起動」とも言えます。
今まで披裂筋類は地声のときにフル稼働しかさせていませんでした。それを裏声を足がかりに細かくコントロールしようとしているので、響きをつくるための喉の他の筋肉と同時に制御しないといけません。初めはそのコントロールさせる神経が十分に育っておらず脳がうまく制御できていません。また、どうやったら意図した筋肉を動かせるかの脳の学習期間も必要です。
例えば、手の小指だけを動かしてみてください。ほとんどの人は薬指も一緒に動きますよね。でもピアニストは全ての指を個別に自由に動かせます。これは長期間の訓練で神経と脳が育った結果です。
いろいろな発声への挑戦
ずっと同じ発声をしていても神経も脳も育ちません。
じゃあどうすればよいかというと、明確な一つの方法がある訳でもありません。いろんな声を出して神経を刺激し脳に学習させるしかありません。
僕がどんなことをしたかを列挙してみます。個人差もあるとは思いますが、奇声を含めていろいろな声を出すしかないと思います。
- 響きを上下に移動させる
- 喉の力を入れる場所をいろいろ変えてみる(首の筋肉ではない)
- シャウトする
- どんな声でもいいから高音曲を歌う(男性なら女性曲、女性なら男性曲の1オクターブ上)
- 歌手の真似をする
- 息を混ぜる
- がなってみる
- エッジボイスを加える
- 脱力する
- 極端に詰まった声にする
- 猫の真似(ミャー)で声を出す
まあ、ひどいですね(笑)。奇声を恐れず神経と脳に学習させましょう。
こういった声をいろいろなパターンで出して良い響きに聞こえるところを探すしかありません。
練習に適した曲
少し話がそれますが、日本人と欧米系は発音が違いますよね。母音や子音が違うのは当然ですが、喋り声を響かせるところも違います。
日本語は口(喉)だけで声を出しており、欧米系の言語は頭部や鼻腔に響かせて声を出します。これ歌への影響が結構大きいと思います。
もともと僕は洋楽好きなんですが、ボイトレしてても洋楽のほうが成長しやすい気がするんです。練習してても原曲歌手のイメージで歌ってしまうので、もともと響いてる歌手のほうがいいと思います。どうしても邦楽は声が細い人が多いし、ミックスボイスの歌手でも裏声感が強いと思います。(スピッツとかエグザイル系とか)
また、J-POPよりもロック系のほうがミックスボイスの練習には適していると思います。高音シャウトが必須で裏声皆無なので地声感を増すのに適してます。J-POPだとあまり力強さを出さないので裏声感から抜けにくい気がします。
なので、ミックスボイスの練習には、洋楽ロックがおすすめです。
ミックスボイスがある程度できるようになってから他のジャンルに応用すればいいと思います。
僕の個人的なおすすめは、Mr.bigです。ボーカルのEric Martinは、ハスキーで太くてとても魅力的な声です。僕もこんな声が出せたらいいのにといつも思ってます。
「To Be With You」がとても有名ですが、僕のお気に入りの曲は「Take Cover」です。とても力強いのに非常に切ないバラードです。Mr.Bigの公式Youtube動画を下に貼っておきます。
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次回は喚声点を通過する音程移動について書きたいと思います。
【1】はじめに
【2】歌唱の基礎知識
【3】発声練習編
【4】歌唱テクニック編
- 高音ボイストレーニング -
【1】カラオケで高い声を出したい
【2】高音ボイトレ 導入編
【3】理論編
【4】練習編
- 【4-1】裏声の強化、出し方
- 【4-2】ヘッドボイスの出し方
- 【4-3】ミックスボイスの出し方
- 【4-4】ミックスボイスの声質・共鳴
- 【4-5】ミックスボイスの音程移動
- 【番外】1万人以上のレッスンから生まれた高音ボイストレーニング教材
【番外編】
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